ブリーフの実例
同じ案件を二通りのブリーフで頼むと、返ってくる画面だけでなく、直すときに言えることが変わります。
図の中身を文字で読む
- ✕ 判定できない指示 ○ 判定できるブリーフ
- 渡した言葉 渡した言葉
- 「やわらかく、いい感じに」 誰に: 45歳・スマホ・初めて通う
- 「もっと親しみやすく」 禁止: 中央揃えのヒーロー、3枚カード
- 「なんか違う。もう少し」 完了: 本文 4.5:1 以上、375px で横あふれ 0
- 返ってきた画面 返ってきた画面
- 差し戻しに言えること 差し戻しに言えること
- 「もっと親しみやすく」としか言えない 禁止の2行目に反する。左揃えに直す
- 判定できないので、往復が増える ブリーフの行を指すので、1回で伝わる
案件(両方に共通)#
架空の整骨院です。院長がひとりで営んでいて、Webからの予約を増やしたいと考えています。条件はどちらのブリーフでも同じにしました。
| 項目 | 中身 |
|---|---|
| 来る人 | 45歳前後。デスクワークで肩と腰が重い。スマホから探す |
| してほしいこと | 電話ではなく、Webの予約フォームから予約を取る |
| 事業者の要望 | 施術の効果を約束する言い方はしない。院内の写真は使ってよい |
| 技術の条件 | 静的な HTML と CSS。更新するのは院長本人 |
✕ 判定できない指示#
まず、思いついたまま頼みました。
整骨院のLPを作ってください。
やわらかくて、いい感じのデザインでお願いします。
スマホでも見やすくしてください。
返ってきたのは、紫から青への階調を敷いたヒーローでした。中央に見出しが一文、その下に丸いボタン。さらに下へ等間隔の3枚カードが並び、それぞれに絵文字が乗っています。本文には「地域に根ざした確かな技術」と書かれていました。
この一文は、どの整骨院のサイトに貼っても成り立ちます。 院の固有の事実が1つも入っていないからです。
差し戻すと何が起きるか#
| 返した言葉 | 返ってきたもの |
|---|---|
| もっと親しみやすく | 絵文字が増え、角丸が大きくなった |
| そういうことではない | 色が水色に変わった。骨格は同じ |
| もう少し落ち着いた感じで | 彩度が下がった。中央揃えと3枚カードは残る |
3往復して、直っていません。こちらの言葉に判定できる基準が1つも入っていないからです。 相手は毎回、判定できない語を自分で解釈し直しています。
○ 判定できるブリーフ#
同じ案件を、7項目とつまみで書き直しました。
あなたに整骨院のLPの制作を依頼します。次のブリーフに従ってください。
## 誰に
45歳前後。デスクワークで肩と腰が重い。スマホから探す。院を選ぶのは初めて
## 何を
Webの予約フォームから予約を取ってもらう。電話への導線は置かない
## 態度
静かで実直。院長ひとりの手仕事であることが伝わる。にぎやかにしない
## 必須
- 料金と施術時間を、最初の画面のうちに置く
- 院内の写真を1枚、ヒーローに使う
## 禁止
- 紫から青への階調。中央揃えのヒーローに一文。等間隔の3枚カード。意味のない絵文字
- 施術の効果を約束する言い方。「治る」「改善します」の類い
- 実績の数字と、お客様の声。事業者から受け取っていないので作らない
## 制約
静的な HTML と CSS。外部ライブラリなし。更新するのは院長本人なので、
書き換える場所は本文と料金の表だけに収める
## 3つのつまみ
- デザイン分散度: 中。既定の型から一箇所だけ大きく外す
- モーション強度: 低。色と不透明度の変化だけ。移動は使わない
- 視覚密度: 低。余白を広く取り、1画面に主役を1つ置く
## 完了の判定
- 本文のコントラスト比が 4.5:1 以上
- 幅 375px で横スクロールが出ない
- 内部リンクの切れが 0件
- 禁止に挙げたものが含まれない
返ってきたのは、院内の写真を左に大きく敷き、右に見出しと料金を左揃えで置いた画面でした。カードは3枚ではなく、施術の流れが2段。本文には施術時間と料金が入っています。
1回目で方向が合いました。 詰めるところは残りますが、作り直しではありません。
二つの差はどこで出たか#
| 見るところ | ✕ の指示 | ○ のブリーフ |
|---|---|---|
| 誰に | 書いていない | 年齢・端末・状況まで書いた |
| 態度 | 「やわらかく」 | 「静かで実直」+にぎやかにしない、と否定形も添えた |
| 禁止 | なし | 既定の型・言えない表現・作ってはいけない情報の3種 |
| 完了の判定 | なし | 測れる値が4つ |
| 差し戻し | 感想でしか返せない | ブリーフの行を指して返せる |
差が出たのは、書いた量ではありません。判定できる語に置き換えたかどうかです。
検収でどこを見るか#
○ のブリーフで返ってきたものも、そのままは採用しません。この案件では、機械の検査を通ってもなお、人が見るところが3つあります。
- 禁止に挙げた表現が本文に混ざっていないか。 「つらさが軽くなります」のような書き方は、機械の禁止語の一覧では拾えない
- 実績の数字とお客様の声が生えていないか。 渡していない情報が形として自然に埋まることがある
- ヒーローの写真に文字が写り込んでいないか。 画像を生成させた場合、看板や貼り紙の文字が崩れる
この3つは、検証と完了の検収チェックで種別を「LP」にすると並びます。画像の中の文字を出さない組み方はカンプ画像から組むにあります。
次の案件で使い回すときに直すところ#
このブリーフは、そのまま別の業種へは移せません。移せるのは骨格だけです。
| 使い回せる | 毎回書き直す |
|---|---|
| 7項目の並びと、3つのつまみ | 誰に・何を・態度 |
| 完了の判定の4行 | 禁止(業種ごとに言えない表現が違う) |
| 「作らない情報」を禁止に置く習慣 | 必須(その案件で最初に見せたいもの) |
禁止が育つと、初回の出力が変わります。 案件が終わったら、差し戻した内容を禁止の行として書き足してから保存します。